大倉 隆彦さん(大倉本家)

 株式会社大倉本家の四代目、大倉隆彦さんにお話を伺いました。

 大倉本家のお酒は、個性的かつ優しい味わいです。
 大倉さんとお話をしていると、なるほど人柄がお酒づくりに表れていることを感じました。

「暑かったでしょう。涼んでください」
 酒(取)材に伺い、最初に通してもらったのは、なんと冷蔵庫(-1℃)。
 真夏の暑い中、駅から約10分歩いてきた僕を、生酒を保管している冷蔵庫に入れてくださいました。

 言葉のままに涼む目的もありますが、本当の目的は、冷蔵庫の中を見学させていただくことです。とても優しい人なんだと、このとき既に感じました。
 これまで、いろんなところで蔵見学をさせてもらいましたが、冷蔵庫の中に入らせてもらったのは、意外なことに初めてで、貴重な経験でした。

 昔は、火入れするのが当たり前でしたが、いまは生酒が基本です。
 今日の酒づくりになくてはならない冷蔵庫。その中の見学から、今回の酒(取)材は始まったのでした。

お酒づくりへのこだわりがない!?

 最初に、お酒づくりへのこだわりをお聞きしたら、「そんな大層なものはありませんよ」と、照れて答えられました。
 しかし、お話を伺っているうちに、蔵見学をさせてもらううちに、ブレない思いがあることに気付かされます。

 たとえば、麹室(こうじむろ)。
 大倉本家では、杉の木を使った麹室を取り入れられています。

 なぜ杉の木を使った麹室なのかというと、「好きだから」。
 水分の吸収など木の特性を活かした麹室の中で、麹の表情を見ながらの手づくり。
 お酒づくりにおいて、麹づくりの工程が非常に重要だと考えられています。


 大倉本家と言えば、山廃というイメージの人もいるかと思います。
 これも、こだわりですね。
 速醸酒母を用いられることもありますが、ほとんどが山廃酒母で仕込まれています。

 こちらの写真で言うと、近いところのシートに速譲。
 奥のシートに、ずらーっと山廃が並ぶそうです。
 大倉本家の、飲みごたえがあり、どっしりとしたお酒は、こうしてつくられるのですね。

 洗米を手作業でしたり、タンクの大きさ、気温との兼ね合い。
 製造工程だけとっても、たくさんの「こだわり」を垣間見ることができました。

 数字や理論も大切ですが、機械的ではなく、素直に、おおらかにお酒づくりをされていることが感じられます。

大倉本家は、どうなっていくの?

――――今後の展望についてお聞かせください。

 昔、日本酒は、神さまと人間を繋ぐものでした。
 同じように、現代では、人と人とを繋ぐものだと思います。

 社会貢献というほどのものではありませんが、お酒を通じて地域の人や応援してくださる人の役に立ちたいです。
 蔵を継いだ頃は、野球でたとえると、ホームラン王や首位打者のようなプレイヤーになりたかったんです。
 いまはマネージャーのように、私個人ではなく、大倉を、そして日本酒業界を、もっと知ってもらったり、盛り上がったりすることに喜びを感じます。やはり「人と人」ですね。

 そのためにも今後は、がんばって製造量を増やしていきたいです。そして多くの人に広めたいです。
 ブレずに真っ直ぐ。
 飲んだ瞬間に、「これが大倉のお酒」だと言ってもらえるような、大倉らしいお酒をつくっていきたいです。

まとめ

 冒頭にも書いたように、大倉本家のお酒には、大倉さんの人柄が表れているように思います。
 大倉さんは、たとえるなら、背中で語る父親のように、優しく、あたたかい人でした。
 熱い思いを言葉で語るのではなく、お酒で表現されているように思います。

 お酒づくりのこと以外にも興味深いお話や、反対に僕への質問など、お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただき、そして酒(取)材後、なんと、駅まで車で送っていただきました。

 世界に1つしかない、個性的な大倉らしいお酒づくり。
 大倉ファンとして、これからもおいしいお酒を期待しています。

 ありがとうございました。

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